原材料の高騰や人口減少など、地方のものづくり企業を取り巻く環境が急激に変化する現代。「Makuake」を一発の話題作りに留まらせず、その挑戦を足がかりに全国へファンを広げ、組織自体を活性化させて持続的な成長を果たす地方企業が増えています。これまで5万件以上のプロジェクトを見つめ、全国各地の現場へ自ら足を運び続けてきたマクアケの常務執行役員で「Makuake」事業責任者の松岡宏治。彼が語る、地方企業が直面するリアルの壁と、地方発の挑戦者が「愛される先進企業」へと進化を遂げるための共創ストーリーとは。
5万件以上の現場で見えた、地方中小企業を阻む「本当の壁」
ーこれまで数多くのプロジェクトをご覧になってきた中で、地方のものづくり企業はどのような悩みや課題感を抱えてご相談に来られることが多いのでしょうか。
松岡宏治(以下、松岡):地方企業を取り巻く外部環境は、今まさに大きな変革期を迎えています。人口減少による人件費の上昇や採用の難しさ、地政学リスクによる原料高騰や関税問題など、ダイレクトにコストプッシュの波が押し寄せている現状があります。国内の買い手が減っていく中で、利益を出しながらものづくりを続けていくためには、単価を上げるか、新しい売上の柱を立てて新たな顧客層へつなげていくしかありません。
ただ、既存のBtoB取引や卸主体のビジネスモデルでは価格決定権を持てず、自分たちに残る粗利が少ないという構造的課題もあります。こうした厳しい環境下で「自社で直接お客さまとつながり、新しい挑戦を始めたい」という差し迫ったご相談が非常に増えています。
ー「良い商品を作っても世に出す一歩が踏み出せない」という事業者も多いと思います。その背景にはどんな心理的・構造的ハードルがあると感じますか。
松岡:一番大きな要因は「リソース(特に人)」不足です。新しい取り組みは既存業務よりもエネルギーを要するため、現場の社員は現状の仕事を優先しがちになります。地方での労働人口が減る中で「社長以外に誰がやるのか」という問題にぶつかってしまうんです。
この壁を突破している企業の多くは「後継ぎ(アトツギ)」の存在がひとつの鍵になっているように感じます。後継ぎの方々は20年、30年という長い時間軸で会社の将来を捉えているため、「今の事業を維持しながらも、未来のために新しい投資や挑戦をしなければ生き残れない」という強い切迫感を持って動くことができます。近年は世の中の変化があまりにも激しいため、「リスクを恐れて何もしないこと自体が最大のリスクだ」と気づき、一歩を踏み出す経営者が増えている印象があります。

ニーズの確信から組織の変革へ。飛躍を遂げた挑戦者たち
ー「Makuake」での挑戦をきっかけに、単なるヒットにとどまらず事業者として大きな成長・変化を遂げられた具体的な事例を教えてください。
松岡:例えば、石川樹脂工業(ブランド名:ARAS)の事例が非常に象徴的です。元々はBtoBの下請け仕事が中心で利益が出しづらく、硬直化した社内組織に強い危機感をお持ちでした。赤字や負債を抱える状況から改革を進め、2020年に新ブランド「ARAS」を立ち上げられました。
当時、高価格帯のプロダクトであったため「この価格帯で本当に一般のお客さまに売れるのか」という不安を抱えていらっしゃいましたが、「Makuake」を活用したところ、市場のニーズと価格受容性をしっかりと確認でき、初期ファンの獲得と実績という強い自信を得ることができた、と伺っています。そこからWebマーケティングへ本格的にアクセルを踏み込み、立ち上げ当初から飛躍的に拡大され、メディアでも多数取り上げられるなど、憧れられる企業へと進化を遂げられました。
ー事業承継を行う老舗企業だけでなく、地方からゼロイチで創業して挑戦されるスタートアップの事例についても教えていただけますか。
松岡:ゼロから地方で起業する方々は、その地域で事業をやること自体に強い意義や可能性を感じているケースがとても多いですね。例えば、福島県南相馬市や浪江町などでクラフトサケを手がけるhaccobaのように、一度人がいなくなった場所だからこそ「自分たちで街づくりも含めてゼロから挑戦したい」と可能性を感じて挑戦されたケースもあります。他の地方でも、熱心に誘ってくれた地元の方と人間関係ができ、「ここでやるしかない」となってスタートされたケースもあります。地方の可能性を感じてゼロから挑戦するプレイヤーも確実に増えています。
ー「Makuake」での結果が、その後の事業展開や組織にどのような追い風をもたらすのでしょうか。
松岡:「Makuake」での挑戦は、単なる資金調達や販売の場に留まらず、toCビジネスの全工程を実践で学ぶ場にもなります。ターゲット設定や価格決定、ページ作成といったマーケティングから、量産・検品・配送、そしてサポーターからの生の声の獲得まで、ECやD2Cに必要な一連の流れをリスクを抑えて体験できるからです。
また、ゼロから立ち上がったブランドが「Makuake」で爆発的な実績を作ることで、大手バイヤーからのアプローチや全国の店舗での棚獲得につながったり、自社スタッフがサポーターの熱い応援コメントに触れることで社内の意識やモチベーションが変わったりします。一発の話題作り(点)ではなく、自社の事業基盤や組織そのものを強く変革するきっかけ(線)になっていると感じます。
なぜ「Makuake」は「地方」の挑戦に伴走し続けるのか
ー「Makuake」が創業時から一貫して「地方の挑戦」を後押しし続けている理由は何ですか。
松岡:マクアケの創業の原点には、代表の中山が感じた「日本製品の存在感や日本のものづくりの可能性」に対する危機感と情熱があります。日本全国の地方には、素晴らしい技術と想いを持った企業がたくさん眠っています。「アタラシイをつくる」担い手は地方にこそいるという確信があるからこそ、私たちは創業期から地方に拠点を置き、地方企業に伴走してきました。
私自身も各地へ直接足を運ぶことを大切にしていますが、地方の企業活動はその企業が根ざしている地域とともにあり、「地域社会や目の前の人を幸せにしたい」というベースがあるように感じています。そのため、現地でその土地の産業や人々に触れることで初めて、企業の本質的な価値が理解できます。リアルな身体性を持って地域にコミットすることは、私たちのビジョンである「生まれるべきものが生まれ 広がるべきものが広がり 残るべきものが残る世界の実現」に直結していると考えています。
ー今後、全国の地方事業者が愛される先進企業へと進化していくために、「Makuake」としてどのような役割を果たしていきたいですか。
松岡:私たちの役割は挑戦のハードルを下げ、その挑戦を持続的なサイクルにしていくことです。挑戦のハードルを下げて「生まれ」やすくし、成長支援(グロース)を通して「広がり、残り」やすくする。そこで得た収益やファンを基盤に、また次の新しい挑戦へと向かうというサイクルをぐるぐると回していきたいと考えています。
ー最後に、新しい挑戦に一歩踏み出せずにいる全国の地方事業者の皆さまへメッセージをお願いします。
松岡:地方の経営者の多くは、孤独の中で決断を迫られていると感じます。だからこそ、一人で抱え込まずに「まずはやってみよう」と気軽に相談できるパートナーでありたいと思っています。最初から何万人もの顧客を集める必要はありません。50人、100人の熱量ある初期ファンと直接向き合い、会話することから世界は変わり始めます。
日本の製造業や地方のものづくりは、やり方さえ変えていけばまだまだ無限の可能性があります。様々な産業のサプライチェーンが国内に整っていることが、これからのAI時代において大きな価値になると思っています。その最初の一歩と、その先にある成長ストーリーを、私たちが全力で一緒に走らせていただきたいと考えています。まずは気軽にお問い合わせください。